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一年三百六十五日、大体ラーメンとお好み焼きとたこ焼きのことを考えています。またまたこんばんは。原作/シナリオを担当させていただいております、時田シャケです。


前回に引き続き、今回も「キャスティングの理由とキャラクターについて」ということでお話しさせていただきます。
前回は女性キャラクターについて語らせていただきましたので、今回は男性キャラクターについてです。


●バルドゥイーン


我らが王子、バルドゥイーンさんです。
長い名前で、しかも言いにくくてごめんなさい。
ゲームの依頼を受けたときに、攻略対象として必ず入れてくださいと言われたのが王子キャラでした。
お題が白雪姫ですから、当然ですね。
しかし白雪姫に出てくる王子様って、全然大事なポジションじゃないんですよねえ、これが。
出てくるのは、話の後半も後半ですし。
試行錯誤した末に誕生したのが、バルドゥイーンです。
王子というよりは、ヒーローっぽくなったかなと思っております。
そうですね、バルドゥイーンサーガでも書きたくなるような。というよりは、書きたいです(女子向けでなくなること請け合いです)
男性陣の中で最初に声が決まったのは、バルドゥイーンです。
昨年一月に、オエセル隊の皆様がプラネタリウムで朗読劇をなさいました。
その練習の際のはらさわ晃綺さんのお声が朗々としていて、とても素敵だったんですね。
普段はコミカルな演技が多い方だっただけに、灰色の王様役のはらさわさんは、衝撃的でした。
そのときから漠然と「バルドゥイーンはこんな声かなあ」と感じていたのが発端です。
今までの役と全く違う役にチャレンジしていただくことも出来るだろうと思えたのは、はらさわさんの存在が大きかったですね。
今回、この試みは大成功だったと思います。


ヨアヒム

お次はヨアヒム。
ぽわわ~んとしている魔法職人です。
白雪姫には、魔法職人なんて出てきませんね。彼の姫林檎での役割は……たぶん、ご想像通りです。
バルドゥイーン=はらさわさんは絶対だったので、あとはクレメンスとヨアヒムはどちらがどちらになるか、ですよね。
それなら女性である松本さちさんが演じられるのは、ヨアヒムでしょう。
ヨアヒムは、敢えて誤解を招きやすい言い方をすると「境界線のひと」です。
松本さんの中性的な声は、ピッタリだと思いました。
ヨアヒムは、目立たないところにいても、彼のルートじゃなくても、常に物語の要を担うキャラクターです。
(要であるが故に、ここであまりヨアヒムのことは語れないのが辛いところですが)
そして、最も難しい役柄だと思います。
だからこそ、松本さんにお任せしたい、という思いもありました。
いつか、誰も知らないヨアヒムの物語を書きたい――ゲーム本編を書いていた頃から思っていたことですが、今回松本さんのお声をいただいて、ますますその気持ちが強くなりました。
キャスティングの話からは外れるのですが、松本さんといえば、やはりあのずば抜けた歌唱力でしょう!
松本さんの素晴らしい歌声を、多くの人に聴いていただきたいという願いから、子守唄は全員に唄っていただくことになりました。
当初は、白雪姫とフォルカーだけのつもりだったんですけどね。
それほどまでの歌声なのです。グッと来ます。圧倒されます。
ぜひお聴き下さい。


クレメンス

そしてクレメンスですね。
クレメンスは、白雪姫の乳兄弟です。
姫に最も近いところにいる家臣です。
執事という役割は、もちろん白雪姫には出てきませんが、執事っぽいポジションと認識していただければと思います。
姫様の逃亡生活には、こういうまめまめしいひとが必要でしょう。
白状しますと、ゲーム本編のシナリオを書いているときに、クレメンスだけは声のイメージがあまり浮かばなかったのです。
自分にとっては、相当珍しいケースです。
ですが、前述のプラネタリウムで浦田さんのお声を一声聞いて、ハッとしました。
「クレメンス、ここにいたんだ……」
青い鳥は、すぐ近くにいたわけです。
ご本人もこのブログコラムで書かれているように、浦田さんはこれまでもクレメンスのような生真面目な役を演じてこられましたが、そのどれとも違うクレメンス自身の味を出してくださいました。
クレメンスはリーダーシップを取るタイプでもなければ、特別な何かがあるわけでもありません。(たぶん)
私が作った白い塑像の上に、浦田さんは素敵な色を置いてくださいました。
実際浦田さんのお声をいただいたことで、クレメンスの良さが浮き彫りになったのです。
今ならクレメンスルートは、もっと良いものが書けるでしょう。
その上で、新しいクレメンス像が描けるのではないか。そんな気がしています。


フォルカー

最後はフォルカー。
レナーテと同じく、このCDのために生み出された新規のキャラクターです。
フォルカーもまた、レナーテ同様アテ書きですし、宮下栄治さんあっての存在です。
今回ゲームの外伝ということで、こちらからオエセル隊の皆さんにお願いしたのは「男性のゲストをお招きしたい」ということでした。
新しいキャラクターがいると、既にゲームをプレイしてくださった方も喜んでくださるかな、と思ったのです。
松本さんに「どんな方がいいですか」と尋ねられたとき、こちらでお願いしたポイントはふたつ。

・はらさわさん、浦田さんと声質が被らない方
・大人の演技が出来る方

そして、宮下さんがいらしてくださったのです。
元々宮下さんがご出演されているアニメをかなり観ていましたし、常々幅広い演技をなさる役者さんだなあと思っていました。
宮下さんの演技の幅の広さを、ひとりの人物の中で最大限活かせるような役を。
それも、今まで演じてこられた役とは違う方向で……と考えた結果が、フォルカーです。
フォルカーは、グレーなキャラクターです。
グレーの中には、限りなく白に近いグレーもあれば、極限まで黒に近付いたグレーもあります。
フォルカーという男のグレーの幅は、皆様ご自身でお確かめください。
宮下さんがブログコラムでご希望されているフォルカーの後日談も、実は頭の中にあります。
いつかどこかで書けたらいいなと、たぶん私自身が一番願っています。


二回連続で書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
CD発売後なら、もっと面白いことが書けたでしょうが、今はこのくらいでご容赦ください。
CD発売まで、あと一月半。
まだまだ更新も続きます。ラジオドラマも配信されます。
願わくば、作品もキャラクターも、皆様に可愛がっていただけますように!